蚊の吸血によって運ばれる寄生虫「フィラリア」が原因となり、最悪の場合、ペットを死に至らしめることもある「フィラリア症(犬フィラリア症)」。予防薬が普及する前までは、この病気によってたくさんの犬が命を奪われていました。
予防薬の普及により、現在ではほとんどのワンちゃんが予防を行うようになったため、フィラリア症にかかるワンちゃんは少なくなりました。しかし、もしものことを思うと、早期発見のための知識も頭に入れておきたいですよね。
そこで今回は、ペットのフィラリア症を早期発見するための2つのポイントをご紹介します。主に犬の病気とされていますが、同じくフィラリア症にかかることがあるネコちゃんの飼い主さんも、注意しておきましょう。
1.定期的にフィラリア検査を受ける
フィラリア症早期発見のもっとも重要な手がかりが、フィラリア検査です。この検査で、ペットの体内にフィラリアの寄生虫がいるかどうかを調べられます。
フィラリアの数が少ない初期は無症状であることが多いため、何も異常がないと考えてしまいがちです。しかし、元気そうに見えていても、体内にはフィラリアの寄生虫がいるという可能性もあるのです。
もし何らかの症状が出てきているなら、すでにある程度フィラリア症が進行しているということになってしまいます。最も早い段階でフィラリア症を発見してくれるのがこの検査ですから、必ず定期的に受けるようにしましょう。
検査なしでの予防薬投与は死亡の原因になる
フィラリア症は、予防薬を投与することでほとんど防げるため、予防がとても大切な病気です。しかし、仮に検査なしで予防薬を投与すると、最悪の場合ペットを死に追いやってしまうことがあり、たいへん危険です。
もしフィラリア症にかかっているのに予防薬を服用してしまうと、大量の「ミクロフィラリア」(フィラリアの成虫が産んだ子ども)が駆除されることで、ショック死やアレルギー反応が引き起こされる場合があります。
予防薬によるショックを防ぐためにも、投与の前には必ずフィラリア検査を受けなければなりません。予防薬を投与し忘れたときはもちろん、毎年欠かさず予防薬を投与していた場合であっても、必ず検査を受けてください。
きちんと飲ませているつもりでも、実は飼い主さんの見えないところで吐き出していたり、体内でうまく吸収できていなかったりする場合もあります。どのワンちゃんにも感染の可能性はありますので、「去年問題なく薬を飲めたから大丈夫」と安心するわけにはいかないのです。
フィラリアの検査方法
フィラリアの検査方法は、血液検査が一般的です。採血した血液を、フィラリア検出キットに垂らし、フィラリア感染があるかどうかを検査します。
ただ、ネコちゃんの場合は、血液検査をしても検出されないことが多いほか、少数のフィラリアによっても死に至ることがあり、診断は困難です。そのため、ネコちゃんの場合はワンちゃん以上に予防が重要になるといえるでしょう。
2.症状がないか観察し、早めに病院へ行く
フィラリア症早期発見のためには、症状が出ていないか確認し、早めに病院へかかることも重要です。すでにご説明したとおり、体内にフィラリアがいたとしても、初期は無症状であることが多いものです。そのため、フィラリア症の初期段階で、検査を受けずに病気を発見することは難しいといえます。
フィラリアの数が増えると症状が目立つようになります。疑わしい症状が出始めたところで病院に連れていけば、それ以上悪化する前に治療を始められますよね。
ただし、気づいた時にはかなり進行しており、元の状態には戻れない場合があるほか、まれに急性の症状が出て突然死してしまう場合もあります。そのため、検査・予防薬の投与を欠かさないことが最重要です。
定期的にフィラリア検査を受け、予防薬をきちんと投与すればほとんど防げる病気ですが、もしものことも無いとは言い切れません。「大したことはないかな」と見逃すことのないよう、当てはまる症状がないかを日頃からチェックしておきましょう。
フィラリア症の主な症状
フィラリア症の症状はさまざまであり、例として以下のような症状がみられます。(ワンちゃんの身体の大きさや状態によっても異なります。)
- 咳が続く
- 呼吸が荒くなる
- 運動をいやがる
- 元気がなくなる
- 食欲がなくなる
- 毛艶が悪くなる
- 痩せる
- 突然倒れる
- 腹水が溜まる(お腹が膨れる)
- 血尿が出る
フィラリアの成虫は肺動脈に寄生し、心臓から肺、または肺から心臓への、スムーズな血液の流れを妨げます。そのため、呼吸がしづらくなる・疲れやすくなるといった類の症状が出やすくなります。重症になると、かかり始めの頃よりもひどい咳や呼吸困難、腹水でお腹が膨れる、血尿が出るなどの症状が出ます。
フィラリア症は「予防」がもっとも重要
フィラリア症が発覚したら、薬あるいは手術による治療を行うことになります。しかし、フィラリア症にかかってから治療を行うとなると、心臓や血管に後遺症が表れる、長期間治療を継続しなければならないなどのリスクがつきまといます。やはり一番なのは、フィラリア症にかからないよう、予防することだといえるでしょう。
フィラリア症の予防とは、蚊が出始めてから1ヶ月後〜いなくなった1ヶ月後の間、月に1回予防薬を投与し、体内にいるフィラリアの幼虫を駆除することです。蚊を見かけるようになったら1ヶ月以内に開始するようにしましょう。
フィラリアを運ぶ蚊を避けるため、「室内飼いにすればよいのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、室内に蚊が入ってくる場合もあります。その数をゼロにすることはほぼ不可能でしょう。
予防薬では、フィラリアの幼虫を駆除することで、フィラリアが成虫になり、心臓に寄生するのを防ぐことができます。
フィラリアを体内に入れないようにすることはできないため、蚊が少なくなってきたとしても、飛んでいる間は忘れずに予防薬を投与し続けましょう。
たった月1回の予防薬でフィラリア症は大いに防げる
以上、ペットのフィラリア症を早期発見するための2つのポイントをご紹介しました。フィラリア症は、一度かかってしまうと治療が大変ですが、たった月1回の予防薬で大いに防げるものです。
また、フィラリア症予防のために定期的に病院を訪れることで、フィラリア症だけでなく、その他の病気の早期発見にも繋がります。大切なペットを守るために、フィラリア症の検査・予防を欠かさないようにしましょう。