猫は本来体臭の薄い動物です。いつもと違う口臭を感じたら病気を疑ったほうが良いかもしれません。
この記事では愛猫のお口の臭いが気になるときに、考えられる病気とその対処法を解説いたします。
いつもと違う口臭なら注意
猫は基本的に臭わない動物です。野生の猫の仲間はハンターですから、獲物に自分の存在を知られないようにするために体臭が少ないのです。
そんな猫ですから、基本的にあまり口臭を感じないはずです。毎日のスキンシップでいつもと違う口臭を感じたら注意したほうが良いかもしれません。
「猫の口は生臭い」とよく言われるのは、昔の猫は生の魚やネズミなどの生肉を食べていたせいです。キャットフードを食べている室内飼いの猫の口臭が生臭い場合は病気を疑ったほうが良いでしょう。
口臭が発生する原因としては、大きく口腔内の病気と全身疾患に分けられます。
口臭の原因となる代表的な口腔内の病気
実は猫には口の病気が多いのです。以下できつい口臭を引き起こす代表的な口腔内の病気を3つご紹介します。
1.歯周病(歯肉炎)
3歳以上の猫の8割は歯周病と言われています。
キャットフードなどのカスが歯に付着したまま、体調の変化などで唾液の量が減ったり、Ph値が変わると口腔内の細菌が増えて歯垢ができます。
その歯垢が歯石になると、歯石から歯肉や歯茎に細菌が入り、炎症(歯肉炎)を起こし、口臭の原因となるのです。
進行すると歯が抜けてしまうだけでなく、歯周病から体内に入った細菌が心臓病や腎臓病の原因になることも分かっています。歯周病になる前には口腔内の環境の悪化が必ずありますので、歯周病になる前に口臭に気づいてあげたいものですね。
歯周病になると、他にも
- 歯茎が腫れる
- 歯茎から出血したり膿が出る
- 歯がグラグラして抜けてしまう
- カリカリのフードを食べなくなる
などの症状が見られます。
2.口内炎(歯肉口内炎)
猫の口内炎は口腔内が広い範囲で腫れるので非常に痛がります。
人間の口内炎の外見とは異なりますので注意しましょう。口内炎の原因としては、栄養不足や以下で説明する全身の病気が挙げられます。
口臭以外の症状は以下のものがあります。
- よだれが大量に出る
- 食欲不振
- 毛づくろいをしない
- 口の中の腫れ
- いつも口元を気にしている
3.吸収病巣
吸収病巣は、歯が歯肉に吸収されていく病気であり、歯に穴が空いたり、歯茎の肉芽組織が盛り上がって赤く見えたりします。原因不明の疾患ですが、進行すると歯がなくなってしまう場合もあります。
ひどい痛みを伴い、口臭以外にも食欲不振、よだれが増えるなどの症状があります。
お口の中を覗いてみてもさほどの汚れはないのに歯茎が赤く腫れている場合は吸収病巣かもしれません。
口臭の原因となる代表的な全身疾患
猫の口臭は、歯周病の治療や口内炎の治療だけでは終わらない場合があります。
特に猫の口内炎の場合、全身性の病気が背後にあって、その一つの症状として口内炎がある場合が多いのです。なかなか治らない口内炎の場合は血液検査をして原因となっている病気を特定した方がよいでしょう。
以下で口臭を引き起こす代表的な全身性の病気を5つご紹介します。
1.猫エイズ(猫後天性免疫不全症候群)
猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス(FIV)が原因で引き起こされる感染症のことです。
猫免疫不全ウイルス(FIV)は血液や唾液を介して感染されるウイルスで、感染後、無症状のキャリア期間を経たのち発症に至ります。
キャリア期間には個体差があり、10年以上も発症しないケースもありますが、発症してしまうといろいろな感染症にかかりやすくなり、口内炎は代表的な症状です。
他にも、
- 食欲不振
- 体重減少
- 下痢
- 嘔吐
- 貧血
などの症状が現れます。
猫エイズかどうかは血液検査でわかります。口内炎が発症している場合は全身状態も悪化しているはずなので、獣医さんの指導に従って治療しましょう。
猫エイズ自体は完治はしませんが、ウイルスの活動が弱まれば寛解状態になります。
2.猫白血病
猫白血病は、猫白血病ウイルス(FeLV)が原因となる感染症で、発症するとウイルスが骨髄の造血細胞を侵すので、
- 貧血
- 体重減少
- 発熱
- 食欲不振
- リンパの腫れ
- 口内炎
- 下痢
などが現れます。全身状態が非常に悪化しますので、すぐに病院に行きましょう。猫白血病も血液検査でわかります。
3.腎臓病
腎臓病が進むと、体内のアンモニアが処理しきれなくなって口臭が強くなる場合があります。
他にも、
- 水をたくさん飲む
- 尿が多い
- 尿の色が薄い
- 嘔吐
などの症状もあります。
歯周病の細菌が腎臓に達して腎臓病になることも分かっています。
4.糖尿病
糖尿病になると、血液中にケトン体という物質が多くなります。ケトン体は独特の臭気を持っているので、口臭がひどくなります。
その他にも、
- 急激に痩せる
- たくさん水を飲む
- 尿がたくさん出る
- お腹が膨れる
といった症状があります。
5.巨大結腸症
巨大結腸症は、結腸にたくさんの便が溜まって排便できない病気です。
便秘が長期に渡って続くと、腸の中で細菌が増殖してしまい、便臭を伴う口臭がするようになります。
猫は排便したいのでトイレに入って排便の姿勢をとりますが、力んだ瞬間に吐いてしまうこともあります。
口臭がきつくて、何日も排便していないようならこの病気を疑いましょう。排便があっても固くて少量しか出ていない場合も動物病院に相談しましょう。
口臭の原因となる病気を予防するための3つのポイント
以上のように、猫の口臭には様々な病気の可能性があります。これらの病気を予防するためのポイントを3つご紹介します。
1.毎日自宅でお口のケアをする
口内環境の悪化による歯周病、口内炎を防ぐために最も大切なのが、自宅でのお口のケアです。
嫌なものは嫌、という猫でも子猫の頃からお口を触ることに慣れさせていれば仕方なくお口を見せてくれることもあります。
口を触られることに慣れたら、ぜひ毎日歯磨きをしてあげてください。
ストレスなくお口の点検や歯磨きができるグッズや、歯周病対策のフードやおやつもありますので、市販のグッズも活用してみると良いでしょう。
2.定期的に病院で健康診断を受ける
口腔内の健康管理にとどまらず、感染用を防ぐためのワクチン注射、難治性の慢性疾患の早期発見のためにも定期的な動物病院での健康診断は欠かせません。
犬と違って、猫は届け出もワクチン接種の義務もありません。それだけに、病院での受診をついためらってしまい、病気の発見が遅れて、不幸な結果になるケースも多いのです。
完全室内飼いでも感染症のリスクはゼロではありませんし、運動不足が慢性疾患の原因になる場合もありますよ。
3.少しでも口臭が気になったら動物病院を受診する
少しでも口臭が気になった場合には、できるだけ早い段階で病院を受診すると良いでしょう。
病院を嫌がる子も多く、飼い主さんも受診のたびに大変苦労することはよくわかりますが、猫は犬以上に病気の初期症状がわかりにくい動物です。
ぜひ重大な症状が現れる前に病院を受診して、トラブルを未然に防ぎましょう。
口臭が気になって受診した結果、重大な病気が見つからなかったとしても、きっと動物病院のスタッフに日頃の口腔ケアについてアドバイスが受けられますよ。
毎日のケアと動物病院の受診が大切
以上、猫の口臭の原因となる病気とその対処法について解説しました。
愛猫といつまでも楽しく暮らすためにも、毎日のケアと定期的な健康診断を心がけ、少しでも口の臭いに違和感を感じたら「たかが口臭」と軽く考えずにすぐに動物病院に相談することをおすすめします。